北メソポタミア平原における初期農耕村落の発生と展開に関する考古学的研究
【研究分野】考古学(含先史学)
【研究キーワード】
メソポタミア / 先土器新石器 / 最古の土器 / 農耕牧畜の起源 / 打製石器 / 考古学 / シリア / セクル・アル・アヘイマル / 国際研究者交流 / 新石器時代 / 先史土器 / 石膏
【研究成果の概要】
北メソポタミアの一角、シリア東北部ハブール平原にあるテル・セクル・アル・アヘイマル遺跡につき3次にわたる発掘調査、地理学的調査ならびに採集標本の解析、年代測定などをおこなった。その結果、以下の新知見を得た。
(1)当遺跡の最古の居住が先土器新石器時代B期半ばまでさかのぼるという所見を得た。放射性炭素年代で800年を大きくさかのぼる時期の居住である。従来シリア領北メソポタミアでは先土器新石器時代B期末の遺跡が最古とされていたから、本研究による調査結果は通史を書き換えるものとなった。
(2)先土器新石器時代B期半ばの建造物および物質文化は南東トルコの当該期遺跡のそれと類似していることがわかった。これは、北メソポタミア平原に定着した初期農耕民のルーツを考察する上でカギとなる知見である。
(3)当遺跡の居住はその後もとぎれることなく土器新石器時代後半まで続いていることが判明した。すなわち、先土器新石器時代から土器新石器時代にいたる初期農耕村落文化の発展、変遷過程を通時的に調べうる重要資料が得られた。
(4)土器新石器時代初頭の土器は従来知られていたプロト・ハッスーナ式ではなく、新種の土器であった。層位的にプロト・ハッスーナ期より古いことが確実であるため、北メソポタミア最古の土器群を定義することができたことになる。
(5)居住期間を通じて経済活動がいかに変化したかをしらべるための動植物違存体を大量に採取することに成功した。
(6)当遺跡はハブール川に近接している。この特性を利用して河川流路・水位の変遷と遺跡形成過程との関係を調査した。これは古環境と新石器時代住人の占地活動の関連を探る貴重なデータとなった。
【研究代表者】