転写後レベルでのエピジェネティックな遺伝子調節機構と発癌における役割
【研究分野】発がん
【研究キーワード】
エピゲノム / 転写 / ヒストン / 発癌 / 機能性RNA
【研究成果の概要】
DNAメチル化やヒストン修飾異常は癌関連遺伝子の不活化に重要な役割を果たし、転写の開始反応を抑制するとされているが、遺伝子プロモーター以外の遺伝子発現制御機構に関しては未知の点が多い。本研究では、転写伸長反応など転写後レベルの遺伝子発現制御におけるDNAメチル化およびヒストン修飾の役割について明らかにすることを目的とする。本年度は、メチル化シトシン結合タンパク、及びヒストンH3K4、K9、K27、K36のメチル化を特異的に認識する抗体を用いて免疫沈降したクロマチンからDNAを抽出し、次世代シークエンサーにより、癌細胞におけるDNAメチル化、ヒストン修飾の状態についてゲノム網羅的に解析し、癌における遺伝子発現の異常に関連するエピゲノム変化について解析した。
癌細胞株を用いた解析では、いずれも安定して5,000万タグ程度の情報を得ることが可能であった。白血病細胞株においてMethylminer法によるDNAメチル化の網羅的解析とメチル化阻害剤で遺伝子発現が誘導される遺伝子について比較したところ、メチル化阻害剤で誘導される遺伝子の中には、プロモーター部位のメチル化だけでなく、H3K27me3により発現抑制されている遺伝子群が同定された。メチル阻害剤によるメチル化解除と遺伝子発現は、必ずしも転写開始点のメチル化の程度と一致しないが、転写開始点がメチル化されていて、メチル化阻害剤で発現上昇する遺伝子は既知の疾患関連遺伝子が多く含まれていた。また、多発性骨髄腫細胞株を用いた検討においては、DNAメチル化はプロモーター部位にCpGアイランドを持つ遺伝子において顕著に遺伝子発現制御と逆相関の関係を示したが、そうでない遺伝子については関連が見られなかった。さらに、Genebody領域のメチル化領域は遺伝子発現と正の相関を持ち、プロモーター領域のメチル化とは違いが見られた。
【研究代表者】