神経活動リズムを形成する過分極応答解析のためのイメージングデバイス開発
【研究キーワード】
同期性神経活動イメージング / 多点電極神経活動記録 / 膜電位感受性色素 / カルシウムイメージング / マイクロ流路 / 培養神経細胞 / 細胞外電位記録
【研究成果の概要】
本研究では、齧歯類あるいはヒトiPS細胞由来神経細胞を高密度で培養すると観察される同期性神経活動を実験モデルとする。齧歯類海馬神経細胞については市販の凍結神経細胞を5万個の神経細胞を培養液5 μLで多点電極上に播種すると、10日から2週間培養で自発発火が記録されて、次いで短い同期性神経活動が記録され、3週間後には持続時間の長い同期性神経活動が記録できた。実験プロトコルの頑健性を実証するために、他施設研究者に再現性検証実験を依頼したところ、同様の結果が得られたことから、同期性神経活動を記録するための実験プロトコルは完成したといえる。
細胞内カルシウム濃度を測定したところ、活動電位の群発後の神経活動がサイレントで刺激に応じない期間においては、細胞内カルシウム濃度が高いことが分かった。また、膜電位イメージングでは脱分極が持続していることが判明した。群発発火後には、過分極により神経活動が停止するのではなく、脱分極により停止することが明らかとなった。この長い脱分極は、培養液にマグネシウムイオンを0.5 mMから1 mM程度追加することにより短縮した。
薬理試験結果を検討するうえでは外部からの電気刺激による反応を定量的に解析することが必要である。同期性神経活動が発生すると外部刺激に対して神経細胞が反応しないことがあったが、外液のマグネシウムイオン濃度を適量増加することにより外部刺激に応答した。今後、これらの実験条件を検討する。また、ヒトiPS細胞については、製薬企業などが参加しているコンソーシアムから細胞を入手して、同期的神経活動が記録できることを確認した。現在は、他の研究プロジェクトの共同研究先から供与された神経幹細胞を分化させて、神経活動を記録する条件を検討している。現在、外液交換が可能な培養神経細胞用イメージングデバイスの試作に取り掛かっている。
【研究代表者】