ベローソフ・ジャボチンスキー反応により自律振動する高分子ゲルの分子設計と構築
【研究分野】高分子合成
【研究キーワード】
高分子ゲル / インテリジェント材料 / ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド / 体積相転移 / 自励振動 / ベローソフ・ジャボチンスキー反応 / 非線形化学 / 散逸構造 / 刺激応答性高分子 / 振動反応
【研究成果の概要】
本研究では、心臓の拍動や脳波のように、一定周期で自律振動する生理機能を模倣した高分子材料(高分子ゲル)を開発し、運動と情報伝達の機能を持った新規な機能性材料の分子設計を可能にすることを目的とした。そのために、ゲル相内部で自発的な酸化還元振動を生じる化学反応(ベローソフ・ジャボチンスキー(BZ)反応)を起こし、その化学エネルギーが機械エネルギーに転換されて膨潤・収縮の振動を生起するプロセスを分子回路として内包するゲルを設計・構築した。まず、BZ反応の触媒として働くルテニウムビピリジン錯体をモノマー化し、N-イソプロピルアクリルアミドなどのアルキルアクリルアミド系ポリマーに共重合したゲルを作製した。触媒サイトの酸化還元変化によるゲルの膨潤・収縮変化を顕微鏡観察により検討した結果、酸化状態ではゲルの膨潤度および相転移温度が上昇することが確認され、一定温度下では酸化還元による膨潤収縮変化が生じることが明らかにされた。次に、作成したゲルをBZ反応の基質混合溶液に浸し、ゲル内部でBZ反応を生起させた。BZ反応により生じるルテニウム錯体の周期的な酸化還元振動、およびそれに伴うゲルの膨潤・収縮振動を画像解析システムを用いて測定した。その結果、化学振動に伴ってゲルが自励的な膨潤収縮振動を生じた。BZ反応の振動周期は、基質の初期濃度により変化する。そこで反応基質の初期濃度を変化させて、ゲルの膨潤収縮振幅と周期の相関を検討した。その結果、反応周期が長いほど、また酸化還元変化量が大きいほど膨潤収縮振幅が大きくなった。すなわち、外部基質濃度や触媒導入量を変えることでゲルの体積振動の振幅が制御可能であることがわかった。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)