直立・歩行の予測制御を構成する神経基盤の構成論的理解
【研究キーワード】
姿勢制御 / 予期的姿勢調節 / 小脳 / 学習 / モデル予測制御 / 予測制御 / 姿勢 / 歩行 / ラット
【研究成果の概要】
ヒトや動物は直立や歩行中に将来の自己の状態を予測して動作を生成する。予測動作の生成には自己の身体内部モデルに基づく予測が必要である。内部モデルは自身の運動状態を表すモデルであり、生物はこのモデルを学習的に獲得する。本研究では、このような姿勢制御・運動制御における予測制御系の原理解明を目指して、予測制御系および内部モデルの学習系のモデル構築と動物の神経系における予測制御機構の原理に迫る研究を行っている。本年度は(1)予測可能な外乱に対するラットの直立予測動作の計測と神経メカニズムの検証、(2)直立予測制御モデルの構築とラットの直立姿勢制御動作の評価、(3)学習にかかわる神経系の障害による直立姿勢動作の影響とモデルによる評価を行い、以下の研究結果を得た。
(1)光刺激を与えた後に傾斜外乱を与える環境を繰り返し経験させることで、予測可能な外乱に対するラットの予測的姿勢制御動作を詳細に計測する環境を構築した。さらに、(2)ラットの身体力学モデルとモデル予測制御に基づくラットの姿勢制御モデルを構築し、実験で得られたラットの予測動作を数理シミュレーションと比較した。その結果、モデル予測制御による数理モデルがラットの予測制御をよく再現できることが示された(Konosu, Funato, et al. Front Sys Neurosci. 2021)。
(3)内部モデルの学習に使われる下オリーブ核を薬理学的に障害したラットの直立動作を計測し、健常ラットと比較したところ、下オリーブ核障害ラットでは重心動揺の特徴周波数の低下とパワースペクトラムの上昇がみられた。この結果を基に数理シミュレーションに基づく制御系の定量評価を行ったところ、下オリーブ核障害ラットでは、(予測制御と考えられる)非線形制御機能の低下がみられることが分かった(Funato, et al., Sci Rep, 2021)。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
柳原 大 | 東京大学 | 大学院総合文化研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)