内閣法制局の基礎研究
【研究分野】政治学
【研究キーワード】
政治学 / 公法学 / 日本史 / 内閣法制局 / 法令審査 / 審査事務 / 意見事務 / 政策研究 / 政治過程 / オーラル・ヒストリー
【研究成果の概要】
本研究はこれまで研究上のブラックボックスであった内閣法制局の研究に初めて本格的かつ組織的に着手した研究である。内閣法制局はいうまでもなくわが国法制、政治制度の中心に立つ機関である。
本研究では、内閣法制局の基幹となる意見事務、法令審査、人事を分析することを通じて、以下の二点の解明を図った。第一に、わた国の政策の形成過程研究のパラダイム転換である。従来、個別の政策分析において法令審査はその実態が不明であることから議論が避けられてきた。本研究では、審査のスタイル、審査事務の分析方法によって、実態に即した政策分析を進め、手法も開発した。第二に、法秩序がいかに維持されているかという点である。法制局は審査において繁多な既存法との関係を整理し、法律の文言を調整し、時に各省庁間の調整をも行うといわれてきた。ケーススタディを通じて個々の事実から、この通説的解釈を証明した。
こうした課題を解くために、本研究は国立公文書館で公開なったばかりの法制局審査資料を活用し、未移管のものは情報公開請求により収集した。その情報量はわれわれの想定を大きく超えるものであった。
情報公開等によって得られた資料を、さらに深く分析すべく、本研究では長官をはじめとする内閣法制局OBへのラル・ヒストリーを精力的に行い、意見事務のあり方、法令審査の方法から、個別の法令審査に至るディテール、そして政府における内閣法制局の位置、法制局の変化に至るマクロな視点まで多くの情報を得て、研究会を通じてこれを分析した。加えて、本研究が、とりわけ戦後政治・政策決定過程を研究する方法論として、法制局資料とオーラル・ヒストリーを用いた立体的な立法研究の地平を開いたことも付言しておきたい。法制局審査はもはやブラックボックスではない。この過程を丹念にトレースすることは、今後の法令研究にとって必須のこととなるであろう。
【研究代表者】