TeV領域宇宙電子のNASAとの共同観測
【研究分野】素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理
【研究キーワード】
宇宙線 / 電子 / 高エネルギー / 気球 / シンチファイバー / カロリメータ / 日米共同 / 宇宙 / 気球観測 / 宇宙観測
【研究成果の概要】
これまでの国内における新方式電子観測装置(BETS)を用いた気球観測を飛躍的に発展させる目的で、米国NASAの研究者と共同して、100日におよぶ長期間気球観測(ULDB)を計画し、共同提案書を作成してNASAのAOに応募した。この提案書の作成のために、日本と米国で各々ワークショップを開催し、研究内容の検討と任務分担の取り決めをおこなった。目的としては、TeV領域のエネルギースペクトルの観測から、超新星爆発における電子加速機構の解明を行うことである。ULDBの初めてのAOであったため、応募が多数にのぼったこともあり、この提案は受理されなかったが、この過程で将来の共同研究グループが形成されたことの意義は大きい。平成11年度は、ULDBにかわる計画として、宇宙研グループがブラジルとオーストラリア横断気球の調査を行うほか、昭和基地における南極周回気球の可能性についても調査、検討を行った。この結果、数年後にはいずれの観測も実施できる目処が立っている。さらに、将来のスペースステーションにおける、日米共同観測の可能性についても、米国で調査、研究を行い近々共同観測提案を行うことが決まっている。
これらの、調査研究と平行して、観測装置の基本部分である飛跡検出部の性能テストをCERNの陽子ビームを用いて行なった。1mm角のシンチファイバー64本を64アノードのコンパクト型ホトマル(Hamamatsu)に接続した装置を、位置分解能0.25mmのホドスコープとならべて陽子ビームを照射した。その結果、最小電離損失の荷電粒子の検出効率はほぼ100%で、クロストークは数%以内であることが確認され、十分に所期の性能を発揮していることが確かめられている。このほか、装置開発のためのシミュレーション計算、電子加速とガンマ線スペクトルの関係や電子の銀河内伝播の計算も実施した。現在、これらの成果は論文にまとめており、平成12年度内には出版の予定である。
【研究代表者】