シリコンフォトニック結晶共振器にPIN構造を集積した光変調器に関する研究
【研究分野】電子デバイス・電子機器
【研究キーワード】
フォトニック結晶 / 光スイッチ / 電子デバイス・機器 / 応用光学・量子光工学 / 量子エレクトロニクス
【研究成果の概要】
フォトニック結晶微小光共振器の屈折率を,キャリアを注入させることによって変化させることによって,光変調が実現できる点に着目し,シリコンフォトニック結晶共振器にPIN構造を集積する構造を作製することを目的として研究を遂行した。本年度は評価系の構築およびデバイスの試作を進めた。その過程においてシリコンフォトニック結晶微小光共振器中でのキャリアの時空間ダイナミクスの挙動を知ることが重要であることが明らかになったので,キャリア挙動を輸送方程式に基づくデバイスシミュレータを作成し下記に示す知見を得た。
(1)フォトニック結晶微小光共振器中でキャリアは極めて局所的に発生し,その局所性がフォトニック結晶微小光共振器の動作速度を向上させていることを明らかにした。
(2)フォトニック結晶は空気穴が多数あけられているため,表面再結合によってキャリアが消滅する影響が予想されたが,実際には100ps以内では表面の影響はほとんどないことを明らかにした。本知見は本研究の範囲に限らず,キャリアによって動作するシリコン微小光変調器の熱特性を改善するために重要な知見である。
(3)PIN構造によって,キャリアを注入及び引き出す動作は数10ps以内で行うことが可能であり,その際には表面再結合の影響もほとんど受けないことを明らかにした。本結果は,PIN構造付きフォトニック結晶微小光共振器デバイスを光変調器として用いるだけでなく,PIN構造を用いて熱の発生を抑制できることを示している。
(4)フォトニック結晶微小光共振器では,有効キャリア寿命が光子寿命よりも短い光デバイスとしては極めて特殊な系になっていることを明らかにした。一般的に共振器を用いた変調器では,低動作エネルギー化を狙うためには高Q値共振器を用いればよいが,キャリア効果によるフォトニック結晶微小光共振器変調デバイスでは,効率的な光変調を行うためには最適なQ値が存在することを示した。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2006 - 2007
【配分額】2,600千円 (直接経費: 2,600千円)