耕作放棄による農地景観の鳥類多様性崩壊の閾値を探る:農業と生物保全の共存に向けて
【研究キーワード】
耕作放棄 / 農地景観 / 鳥類 / 生物多様性
【研究成果の概要】
景観スケールでの耕作放棄の割合が、農地に生息する鳥類群集におよぼす影響を調べるために、まず、岩手県の北上盆地中部において、極端な割り合いの農地景観で予備調査を実施した。
選定する調査区のサイズは800m四方とした。これは、調査地である東北東部の農地に生息するスズメ目およびタカ目の鳥類の行動圏よりも広い範囲にあたる。これが、解析上の1サンプルにあたる。具体的には、耕作放棄地が全体の1割以内の調査区と7割以上を占める調査区を3つずつ選び、そこに分布する鳥の調査を、春(4-5月)、初夏(6-7月)、秋(9-10月)、冬(1-2月) に実施した。
そのデータを、通常の統計解析方法 (GLMとNMDS)で解析した結果、耕作放棄地が1割以内の調査区と7割以上を占める調査区の鳥類の種数や個体数に明確なちがいが見いだせなかった。これは当初の予想と異なる結果である。
予想と異なる結果になった第一の理由として、記録される鳥の種数と個体数が少ないことが挙げられる。記録数が少ないため、実際にちがいがあるにも関わらず、統計的に有意な差異が見られるほどのちがいが検出されない可能性がある。第二の理由として、耕作放棄地以外の鳥への影響が大きい可能性が考えられる。鳥の強い影響を与える景観要因として、農地内の森林パッチの数や面積、河川の有無などが考えられる。
鳥類に加え、農地に生息する鳥類の主要な餌生物となる昆虫類と、種子を生産するイネ科およびカヤツリグサ科草本、液果などを生産する林縁低木類の分布を調査する方法を検討するための予備調査を実施した。予備調査による検討の結果、昆虫類については、畦などの草地で目視によるカウントとスィーピング法、イネ科などの草本や低木については畦と林縁に設置したコドラートでの被度の記録を中心に調査を実施することに決めた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
片山 直樹 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 | 農業環境研究部門 | 主任研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2025-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)