温度応答性培養皿への遺伝子固定化と熱刺激による界面からのデリバリー制御
【研究分野】医用生体工学・生体材料学
【研究キーワード】
遺伝子導入 / 温度応答性 / 高分子 / 界面 / 細胞基底面
【研究成果の概要】
温度に応答して相転移を起こすN-isopropylacrylamide(IPAAm)を主として、カチオン性と疎水性の3つのユニットからなる直鎖状のランダム共重合体(IP-20D-10B)について、293細胞に対する遺伝子導入効率を評価した。導入する遺伝子には、GFPをコードしたプラスミドDNAを用いた。まず定法の培地に添加する方法でIP-20D-10B/DNA複合体を293細胞に加えた所、confluentで細胞分裂が抑制された状態であっても40%程度(t=4d)の高い遺伝子導入効率が得られた。続いて、IPAAmにカルボキシル基を導入した誘導体(CIPAAm)を合成し、IPAAmとCIPAAmを培養基材表面に電子線でグラフトして、温度応答性培養皿を作製した(CIPAAmのモル分率は1,3,5%)。ここに、正電荷過剰のIP-20D-10B/DNA複合体を静電的に固定し、さらに293細胞を播種して細胞の基底面からの遺伝子導入を試みた。CIPAAmのモル比の増大に伴って細胞接着性が低下し、5%CIPAAm培養皿では培養1日目で細胞の凝集が観測された。遺伝子の導入効率は、0、01%以下ときわめて低かった。そこで、接着性の強いretinal pigment epithelial cellに細胞種を変えて同様に検討を行なったが、遺伝子導入はほとんど観察されなかった。しかしながら、IPAAm/CIPAAm温度応答性培養皿では、IPAAm単独の培養皿と比較して温度変化による細胞の回収が容易となることが見出された。本研究における細胞培養表面へのDNAの固定化量は、産総研の遺伝子導入アレイやNorth western Univ.のSheaらと比較して、1/10〜1/100であった。よって、遣伝子導入効率の改善にはDNA固定:量の増大が必要と考えられる。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2004 - 2005
【配分額】3,700千円 (直接経費: 3,700千円)