エラストマー、ナノコンポジットのナノ力学物性評価
【研究分野】高分子・繊維材料
【研究キーワード】
原子間力顕微鏡 / ナノレオロジー / ナノトライボロジー / エラストマー / ナノコンポジット / 弾性率マッピング / 凝着エネルギーマッピング / カーボンナノチューブ / 温度時間換算則 / 界面
【研究成果の概要】
本研究では原子間力顕微鏡をもとにしたナノレオロジー・ナノトライポロジー測定を現実的な系に応用する初の試みとして、高分子工業において最近注目を集めているエラストマー試料およびエラストマーをマトリックスにしたナノコンポジット材料に適用することを目的として研究を推進した。エラストマー試料としては天然ゴムを試料として選定し、主に伸長率をパラメータとした凹凸像と力学物性データとの相関などについて研究を行った。その結果、従来云われてきたアフィン変形の仮説が成立しないことを弾性率の二次元マッピングから明らかにした。零度付近にガラス転移温度があるブチルゴムに関して、その弾性率に関して温度時間換算則を確認することもできた。またナノコンポジット材料についてはカーボンブラックを充填した天然ゴムについて弾性率マッピングを実現し、界面の力学物性を評価することを可能にした。さらにカーボンナノチューブをフィラーとして充填した天然ゴムも扱った。市販装置レベルで可能なフォースモジュレーション法で測定した場合には、試料中にカーボンナノチューブ由来の網目構造が存在していることが分かっていたが、興味深いことにその太さがカーボンナノチューブのそれよりもだいぶ太く、カーボンナノチューブそのものが画像化されているとは考えにくいところであった。一時的に界面相を含む相が観察されたのだと推測したが、その部分の定性的な硬さがマトリックスよりも軟らかいという結果が界面に対する従来の考え方と矛盾していた。しかし、本研究で開発した弾性率、凝着エネルギーマッピングによってこの問題点を解決することができた。界面相は、弾性率は予想通り高く、しかしながら凝着エネルギーも大きいという結果が得られたのである。この結果から、界面にはカーボンナノチューブに強く結合しバウンドラバーとして作用している高分子鎖に加え、末端が遊んでいるダングリング鎖が存在することが示唆された。このナノコンポジット材料の特異な力学物性はこの界面構造に由来しているのだろう。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
中嶋 健 | 東京工業大学 | 大学院理工学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2005 - 2006
【配分額】3,600千円 (直接経費: 3,600千円)