マルチゲート構造を持つ超伝導電界効果トランジスタの研究
【研究キーワード】
超伝導 / 電界効果トランジスタ / 銅酸化物 / ダイヤモンド / 磁気顕微鏡
【研究成果の概要】
超伝導層/2次元正孔ガス(2DHG)層/超伝導層の3領域からなるダイヤモンド電界効果トランジスタ(FET)を世界で初めて作製し、ゲート電圧によるドレイン電流の変調効果を1K-10Kにおいて観測した。2DHGチャネルの微細化で、超伝導FETに発展できる基礎データ取得に成功した。超伝導チャネルの微細化でダメージ層が問題となっていたが、本年度は、エッチング側壁面の超伝導転移温度の低い面方位で常伝導化することで、超伝導電流が流れる細い稜線を形成する稜線伝導型のデバイスを新たに開発した。これまでで最小となるジョセフソン接合幅3μmでの単一段差型ジョセフソン接合にて、直流、交流ジョセフソン効果の観測、およびdc-SQUIDとしての動作に成功した。これらの成果は学会発表され、論文執筆中である。単結晶Bi2212銅酸化物超伝導体を劈開貼り付け法により薄膜化し、低加速電圧で均質にエッチングすることが可能なカウフマン型イオン源によるArイオンエッチング装置によって超伝導チャネルを3.8μm程度に微細化した。ここよりさらなる微細化のためにヘリウムイオン顕微鏡等の使用によって細線化を行う予定である。また、希塩酸処理によるBi2212の超薄膜化についても検討し、成果を学会発表した。汎用半導体シミュレータを用いて3次元シミュレーションを行い、マルチゲートチャネルにおけるキャリア濃度の電界変調効果を知ることができるようになった。超伝導トランジスタは動作時に磁束量子の運動によって抵抗が生じるため、磁束量子の運動を把握することが重要である。有限要素法や磁束量子の動力学法シミュレーションを開発し、磁束量子の運動を理論的に可視化することができた。また、磁気光学効果(MO)顕微鏡を開発し、性能を向上させることで、超伝導体中の磁束量子の運動を実際に可視化することができた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
大井 修一 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 | 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 | 主任研究員 | (Kakenデータベース) |
川原田 洋 | 早稲田大学 | 理工学術院 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)