新しい反射高速電子回折法による表面水素の高精度位置決定
【研究キーワード】
電子回折 / 水素 / 表面
【研究成果の概要】
本研究では、反射高速電子回折(RHEED)法の高度化及び強度シミュレーションによる最適なRHEED条件の探査により、物質表面上の水素の原子位置を高精度に決定することを目的としている。本年度は、RHEED検出システムの構築及び多重散乱理論に基づく強度シミュレーションを実施した。
RHEED検出システムの構築では、低エミッション電子銃及び回折パターン観測システムを作製した。電子銃のエミッション電流は1 μAから100 μAまで可変であり、回折パターンの観測に用いたマイクロチャンネルプレートは最大10,000のゲインを有する。これにより、水素の電子衝撃脱離を極力抑えた回折パターンの観測が可能となった。これを、約20倍まで回折パターンを拡大可能な電子レンズシステムと組み合わせることにより、水素位置に敏感な条件である低視射角でのRHEED強度の観測が可能となった。
実験装置のセットアップに加え、応用上も重要とされるPd(100)表面上の水素吸着に着目して強度シミュレーションを実施した。シミュレーションの結果、対称性のよい[011]方位での低視射角入射の回折強度が水素位置に敏感なことがわかったが、そこから方位角を1~3°ずらした入射条件では回折強度が水素位置に対してより敏感に変化することを突き止めた。RHEED波動関数の詳細な解析から、表面波共鳴とは異なった新しいタイプの表面局在現象により水素位置の敏感性が増強されることがわかった。現在、本成果は学術誌に投稿中である。
【研究代表者】
深谷 有喜 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター 研究主幹
(Kakenデータベース) 【研究分担者】 |
福谷 克之 | 東京大学 | 生産技術研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)