医学部生卒後研修制度がもたらした医療体制の変化と今後の課題:その検証と理論の拡張
【研究分野】経済学、経営学およびその関連分野
【研究キーワード】
割当問題 / 初期臨床研修マッチング / 被験者実験 / 二部マッチング / 医師初期臨床研修 / ゲーム理論 / 定量的評価 / 経済実験 / 医師臨床研修制度 / マッチング / 実証と実験に基づく理論 / 認知能力と経済実験 / 定量的実証研究 / 医学部生卒後研修制度 / 実証と実験に基づく新しい理論の構築
【研究成果の概要】
2021年度には、マッチングによる割当問題に限定することなく、メンバー間で打合せを行いながら、各々の専門領域での割当問題について研究を進めた。渡邊は、メーカーごとに専属サプライヤーとの取引関係があり、さらにメーカー間での受注競争がある状況において、サプライヤーがリスク回避性が実験結果を再現するための鍵であることを計算機実験によって示した。また、投票よる利得の分割がなされるとき、投票の背後にある利得決定関数を被験者が学習することは難しい理由を被験者の選択行動を調べることで明確にする試みがなされた。小川は、多人数での調整ゲーム実験を実施し、理論的には同じ結果を導くチープトークの導入で調整問題が解決・改善するかを検討した。その際には、被験者の認知能力スコアを収集しており、本プロジェクトにおけるマッチング実験の基礎資料として蓄積されている。また、再割当アルゴリズムの実験も実施した。
一方、理論面では栗野が医師たちと共同で取り組んできた交換移植制度の運営とそこでのマッチングについて、現状と今後の可能性を明確にした。さらに、オンライン予約を伴う割当問題に関するメカニズムを開発し、その実験結果も公表した。熊野は割当問題における調整過程について、独自の研究を進めた。
後藤は、昨年度に引き続き、医療データベースを用いた医療費と医療サービスの費用対効果に関する評価を行い、理論と実験を担当するメンバーに課題を提示した。具体的には、人工知能を使った診断プログラムの評価、大腸がんの医療費の統計的分析、高齢者の筋力低下と将来の医療費との関連、医療政策に関する評価、高齢者の医療費自己負担割合の変化が医療受診に与える影響などである。
以上のように、2021年度には、医療に関わるマッチングを含むより広い意味での割当問題に関する理論、実験、実証研究がなされ、本プロジェクトにおける基礎的知見の積み上げがなされた。
【研究代表者】