現代都市開発法制と都市居住環境の形成・整備に関する比較・総合的研究
【研究分野】民事法学
【研究キーワード】
都市法 / 現代土地法制 / 都市計画 / 都市整備 / 都市再開発 / 住宅政策 / 居住環境整備 / 土地所有権
【研究成果の概要】
1.本研究の目的は、わが国と欧米諸国(独・仏・英・米)における近時の都市開発(再開発)政策とその法制度の動向を、《住民にとっての住宅と居住・生活環境の改善・整備》という観点から比較・総合的に考察することにより、わが国で推進されている都市開発の動向に内在する問題点を析出しその克服の方策を探ることにある。そのために本研究は、(1)個々の制度・政策の単純な横並びの比較ではなく、各国の法制度の全体的構造と特徴をその国の都市問題の実情に即して分析・把握した上で、(2)幾つかの重要な検討項目を課題に即して設定し、より堀り下げた比較対照を行うこと、また、(3)とくにわが国については、制度と政策の問題点を都市開発の具体的実態に即して理解することに留意して進められた。
2.その成果としては、まず、(1)各国間の差異と共通性を総合的に洗い直すことにより、こうした研究作業に不可欠な比較分析の視座と基準を明確化したことがある。また、(2)その基準に即してみた場合、彼我の間には都市法の理念・目的、土地所有権の法規制、都市法の構造と機能、都市形成における住民の役割などにつき様々な差異が存在するが、それらは、他の諸要因のほかにも、《市場原理による都市形成》と《その公共的・計画的コントロール》という2つの要素の政策的・制度的関連づけの仕方の相違と密接に結合していること、そして、(3)この点での相違が、わが国の都市開発における居住環境の改善・整備という課題の比重の軽さと結びついている以上、その面での制度的システムの見直しが今後の重要な問題となるであろうことなども、明らかになった。
3.なお残された問題もあるとはいえ、本研究の成果(二度にわたって発表した13本の論文と、その一部をも収録した「研究成果報告書」参照)は、今後の都市開発法制の研究にとって、1つの重要な拠り所を提供しうるものであろう。
【研究代表者】