大都市における都市構造の転換と社会移動に関する実証的研究
【研究分野】社会学(含社会福祉関係)
【研究キーワード】
大都市 / 都市構造転換 / インナーエリア / インナーサバーブ / ライフスタイル / パーソナル・ネットワーク / 住民活動 / 都市エスニシティ / 都市社会構造の転換 / 社会移動
【研究成果の概要】
本研究の自的は、1970年代以降の東京の都市社会構造の変動の意味を地域コミュニティレベルから実証的な調査を通じて明らかにすることである。初めに、東京圏の人口構造の変動を時系列に検証し、都市化と少子・高齢化の進展による地域社会構造の変容を確認した。その上で、地域移動、階層、ライフスタイル、パーソナルネットワーク、住民活動などの視角から、インナーエリア(台東区)とインナーサバーブ(三鷹市)の住民意識調査データの分析を行った。主なファインディングスは以下の通り。(1)両地域で定住者化の形態は異なるが、選択的人口移動プロセスとしてはむしろどちらの地域でも居住者の社会的地位は低下しないこと(残留者の方が高い社会的地位を有しており、インナーシティ問題の発生には一定の留保が必要である)、(2)大都市の異なるエリアを横断して、同じ資源をもつ自営業と経営者は類似したスタイルを、管理職と専門職は異なるスタイルを、それぞれ持つこと、(3)両地域で社会的ネットワークの構造が異なっており、台東では自営業者の集住や伝統的地域集団に支えられた地縁的地域文化の効果が見られるが、三鷹ではネットワークの多様性が個人属性によって規定される傾向があること、(4)既存の住民活動とボランタリーな市民活動の重層化の進展によって、従来のコミュニティ政策が揺らいでいること。本研究ではさらに2つの個別調査を行った。一つは墨田区京島地区の近年の地域的変化に関する事例調査であり、脱工業化が80年代以降も一貫して継続しており、区の工業政策がそれほど効果を発揮していないことを、二つは台東区谷中地区の商店主の悉皆調査であり、衰退の危機に対応して商業自営業者層が一定の積極的対応を行っているものの、町会のコミュニティ活動とは非連続であることを明らかにした。
【研究代表者】