マイクロ波散乱理論に基づく多入射角・多偏波計測による土壌水分・粗度の同時逆推定
【研究分野】水工水理学
【研究キーワード】
マイクロ波 / リモートセンシング / 土壌水分量 / 地表面粗度 / 理論モデル / 粗度因子 / 合成開口レーダ / RADARSAT / 土壌水分-地表面粗度 / 多周波数、多偏波、多入射角 / 逆推定 / 誘電特性
【研究成果の概要】
昨年度までの成果を踏まえ、まず水田域におけるマイクロ波リモートセンシングの適用可能性の理論的検討および、散乱実験を行った。またタイの水田域を対象とした衛星画像解析を行った。その結果、Cバンドでは浅い入射角であれば、、Lバンドではどの入射角でも地表面状態を観測できることを理論モデルを用いて明らかにした。その一方で現在運用されている衛星SARでは、稲キャノピー下の地表面状態を完全に分類することは難しいことも明らかになった。タイの水田域に関しては複数のリモートセンサ画像を元にしたデータヒュージョンを行い、現時点での確からしい面的土壌水分図を作成した。
上記水田域だけでなく、多入射多偏波マイクロ波散乱実験を、裸地、草地に対して一年を通して行い、植生量、土壌水分量、地表面粗度を同時に計測することによって、後方散乱係数に与える各種パラメータの解析を行った。
これら実験圃場における観測地の解析結果と多入射角マイクロ波センサーを持った人工衛星RADARSATによる衛星リモートセンシングデータとを比較分析した結果、以下のような結果が得られた。すなわち、植生の成長の諸段階ではどの確度や偏波でも地表面パラメータの取得が可能であるが、植生成長の後期段階では土壌水分情報はHV偏波でのみ取得可能であることが発見され、粗度と相関関係にある植生パラメータは高入射角で顕著に取得可能であることが認識された。
最後に、これらを用いてリモートセンシング情報から土壌水分と粗度を同時に算定するアルゴリズムを開発した。
また、多入射角マイクロ波散乱計である衛星搭載TRMM/PRの地球全体のデータを一年分処理しその季節変化に注目することにより、地球全体の土地のおおよその被覆状態や地表面湿潤度を衛星から計量できる可能性を示した。
【研究代表者】