前近代文学者たちの近代―明治・大正・昭和期における伝記と肖像の継承と変容
【研究分野】文学一般
【研究キーワード】
文学者 / 肖像 / 美人観 / 小野小町 / 三島由紀夫 / 記紀神話 / 『シン・ゴジラ』 / 絵巻 / 清少納言 / 世界三大美人 / 近現代 / 古典受容 / 和泉式部 / 『源氏物語』 / 紫式部 / 映画 / 伝記 / 日本古典文学 / 近代
【研究成果の概要】
上代から近世までの代表的文学者の人物伝と肖像を横断的に分析し、近代以後、古典文学とその作者の人物像がいかに伝わり広まったかを追う研究課題のうち、令和3年度は、令和2年度に刊行した「世界三大美人」論の続編にあたる論文を発表した。当該論文では、小野小町に対する現代におけるイメージと戦後の美人観との関連性を考察した。昭和期における容貌をめぐる価値観の変容を論じる中で、女性のみでなく男性についての議論も必要であると感じ、その後、三島由紀夫の肖像写真についての口頭発表を行うに至った。本研究課題は前近代文学者を研究対象とするものであるが、以後の研究を近代以後の作家の伝記および肖像に広げる一つのきっかけを得ることとなった。
「世界三大美人」言説の研究は現在に至るまで反響が大きく、令和3年度には興味を持った高校生からインタビューを受ける機会などもあった。肖像の研究から派生して、容貌に基づく差別を考えるという問題関心から執筆した既発表の『病草紙』論(「暴露の愉悦と誤認の恐怖――「病草紙」における病者との距離」牛村圭編『文明と身体』臨川書店、平成30年)をふまえ、令和2年に続き令和3年にも、高校生に向けて『病草紙』論を発信する機会もあった(高校生向け合同進学ガイダンス「夢ナビライブ」オンライン講義「絵巻「病草紙」から考える「美」と「醜」」)。
上記の研究ほか、映画『シン・ゴジラ』におけるヤマタノオロチやヒルコ、カグツチをめぐる記紀神話の物語の応用についての分析も行った。平成29年に仁川大学校で行われたシンポジウムでの発表内容がようやく活字化されたものである。古典文学が現代においてどのように受容されているかをめぐる研究として、文学者の伝記および肖像の現代における受容研究にも繋がるテーマとなった。韓国の研究者との協働により、日本古典をめぐる問題を国際的な視野から考える機会も得ることができた。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2017-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)