レーザおよび放射線照射によるシリカガラスの励起状態と欠陥生成
【研究分野】電子材料工学
【研究キーワード】
シリカガラス / エキシマレーザ / 2光子吸収過程 / 点欠陥 / シンクロトロン放射光 / 放射線 / 欠陥生成 / エキシマレ-ザ
【研究成果の概要】
1.エキシマレーザによる常磁性欠陥の生成機構の確立
種々の条件下で合成された一連のシリカガラスにエキシマレーザ(6.4eV)照射をした際に誘起される常磁性欠陥種とその生成量をESRにより調べ、たとえば、E'中心はあらゆる型の試料において観測されるが、非架橋酸素ラジカルは酸素過剰型試料およびB2βと呼ばれる試料にのみ観測されることを見い出した。また、E'中心等の生成量の試料依存性を調べることにより、エキシマレーザ誘起欠陥の生成機構として、従来より考えられている自己捕獲励起子の非輻射緩和によるSi-O-Siの正常な結合からの欠陥生成と合成時に導入された前駆体からの欠陥生成の2つの機構のうち、後者が主たる欠陥生成機構であることを明らかにした。ついで、エキシマレーザ(6.4evあるいは7.9eV)照射したシリカガラスについて、分子科学研究所および東大物性研のシンクロトロン軌道放射光施設を利用することにより、SR光吸収スペクトルの測定を行った。同時に、さらに、ESRにより常磁性欠陥の生成種およびその生成量をレーザのパルス強度、光子エネルギー、および照射量の関数として調ベた。その結果、合成時に導入された酸素空孔、過酸化結合、およびSi-OH結合等の欠陥を前駆体として、二光子吸収により生成した電子あるいは正孔が前駆体欠陥において捕獲されるか、電子・正孔対の非輻射再結合によるかのいずれかにより、常磁性欠陥が生じていることを明らかにした。
2.欠陥生成におよぼす水素の役割の明確化
エキシマレーザ(6.4eVあるいは7.9eV)照射した2種類の酸素欠乏型試料([OH]〈1ppmおよび、[OH]=20ppm)について、ESRおよびSR光吸収スペクトルの測定を行い、OH基が多い試料では、OH基が少ない試料と比較してE'中心が1-2桁多く生成されると同時に、酸素空孔による7.6-eV帯の減少とE'中心による5.8-eV帯の生成が顕著であることを見い出した。さらに、この試料のESRにおいて、幅7.4mTの超微細相互作用分裂が生じ、水素原子の生成が観測されることから、酸素空孔からのE'中心生成機構として、酸素空孔における水素原子の捕獲による機構を新たに提案した。
【研究代表者】