鉄固相変態の分子動力学解析を目的とした格子変形パスを再現するポテンシャルの開発
【研究分野】熱工学
【研究キーワード】
分子動力学法 / 鉄固相変態
【研究成果の概要】
本研究では,鉄fcc・bcc間の変態・逆変態を再現するポテンシャル関数を開発し,分子動力学(MD)法により,鉄固相変態における界面キネティクスや諸物性を解析することを目的としている.平成21年度は,Finnis-Sincliar(FS)ポテンシャルのカットオフ関数に着目し,これらの変化によりfee,bcc両相の凝集エネルギー安定性を,変態温度(A3点)で交差する形にフィッティングすることで,変態・逆変態の両過程を再現するポテンシャル関数を構築した.構築したポテンシャルを用いたMD法解析により,実験的に観察されるNishiyama-Wassemann方位関係のfcc-bcc界面において,変態温度より高温でfcc側,低温でbcc側に自発的に変態する過程を再現することに成功した.定性的にではあるが,fcc-bcc間の変態・逆変態を再現するポテンシャル関数の開発,変態・逆変態過程の解析という当初の目的を達成できた.また,FS型ポテンシャルにおいて変態に支配的なパラメータを特定できたことで,今後,定量的な一致を視野に入れたポテンシャル開発への道筋ができた.
また,既存のFSポテンシャルを用いたMD法計算により,fcc-bcc変態過程における原子キネティクスや界面速度の結晶方位依存性を検討し,原子応力分布や界面整合性から変態パスについて検討した.さらに,固液界面キネティクスや固液界面エネルギーをGibbs-Thomson関係から算出し,実験値に近い妥当な値を得た.
これらの結果を国内外の学会(計算力学講演会,鉄鋼協会,MRS)で発表し,論文「Chemical Physics Letters」で発表した.さらに,現在雑誌ISIJ Internationalに2編投稿中であり,国内外に向けて本研究で得られた結果の公表に努めた.
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的萌芽研究
【研究期間】2008 - 2009
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)