熱力学的非平衡状態を用いたナノ構造強磁性体の作製とスピン相関デバイスへの応用
【研究分野】ナノ材料・ナノバイオサイエンス
【研究キーワード】
スピントロニクス / 巨大磁気抵抗効果 / 磁界センサ / 不揮発メモリ / 静磁気相互作用 / 磁化反転過程 / マイクロマグネティクスシミュレーション
【研究成果の概要】
ナノ構造を有する強磁性多層膜ピラーの磁化反転特性を独自に開発した2段階ミリング法によるクロスコンタクト測定法を用いて詳しく調べた。また、磁性層間の静磁気的結合が多層膜ピラーの磁化過程に及ぼす影響を定量的に解析するため、マイクロマグネティクス計算結果からのエネルギー再構成を導入した新しい単磁区モデル計算を行った。さらに、強磁性層としてハーフメタル材料であるFe_3O_4を用いた多層膜ピラーを作成し、電界によるスピン輸送特性制御についても調べた。
1)サブミクロンスケールに微細加工したNiFe/Cu多層膜パターンのCPP-GMR特性を調べた。その結果、フリンジ磁界に起因する磁性層間の静磁気相互作用により、隣接磁性層の磁化が互いに反対方向に回転する可逆磁化過程が実現することを磁気抵抗測定より確かめた。磁界掃引に対して磁気抵抗の大きさが履歴なしにかつ線形変化するこのような特性は、極微磁界センサへの応用上重要な成果である。また、多層膜の磁化過程を効率的かつ高精度に導出可能な新しい計算モデルを確立し、多層膜パターンの飽和磁界の膜厚依存性について明らかにした。
2)Fe_3O_4を用いた多層膜ピラーの膜面垂直(CPP)電気伝導特性において、バイアス電圧によりCPP伝導度が3桁程度変化するスイッチング現象を発見した。さらに、高抵抗状態から低抵抗状態へのスイッチング電圧は、温度上昇に伴い単調な減少を示し、熱的励起と電気的励起の相乗効果として伝導度スイッチングが起こることがわかった。さらに、スイッチング電圧がFe_3O_4層の膜厚にほぼ比例しており、膜厚方向の電界強度がスイッチング現象を支配していると考えられる。なお、スイッチング電圧の温度依存性および膜厚依存性の結果より、電気的励起のみによるスイッチングの閾値電界が2×10^7V/mであることがわかった。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】3,800千円 (直接経費: 3,800千円)