肥満モデルラットを用いた骨格筋・脂肪組織間のクロストーク機構の解明
【研究分野】基礎獣医学・基礎畜産学
【研究キーワード】
骨格筋 / 脂肪 / 筋衛星細胞 / 分化 / トランスジェニック / 筋線維 / 肥満 / 培養
【研究成果の概要】
本研究は、骨格筋の発達と体内の脂肪蓄積との間に相互作用が存在する、という仮説を検証することを目的としたものである。前年度、本研究で用いる予定であった肥満モデルのトランスジェニックラットの繁殖効率が低下し、十分な解析を行うことが出来なかったが、本年度は繁殖効率が回復したため、加齢に伴う骨格筋発達の低下について詳細な検討を行った。その結果、(1)本トランスジェニックラットにおける骨格筋発達の低下は、速筋線維を主体とする前脛骨筋、長指伸筋で著しく、遅筋線維を主体とするヒラメ筋では比較的軽微であることが判明した。(2)また、前脛骨筋重量の低下についてより詳細な解析を行ったところ、筋線維直径の著しい発達不全が生じていることがわかった。これらについては、現在、運動負荷などにより、脂肪蓄積を減少させた場合に改善が見られるか否かについてさらなる検討を行っている。
一方、前年度に着手した筋衛星細胞の脂肪細胞への分化機構に関しては、筋線維の状態がその分化能に影響を与えるという新たな知見を得ることができた。すなわち、筋衛星細胞が筋線維に付着したin vivoの状態を忠実に再現する培養系をまず確立した。この系により、筋線維の壊死・変性により筋衛星細胞が脂肪細胞へと分化誘導されることを見いだした。この結果から、筋線維が壊死・変性した際に何らかの因子の産生が亢進し、この因子が筋衛星細胞へと作用することにより脂肪細胞への分化が生じたものと推察された。現在、この因子の同定を目的とした実験が進行中である。
以上、本年度の研究により、骨格筋の発達と体内の脂肪蓄積との間に相互作用が存在するという仮説をさらに支持する知見を得ることができた。今後は骨格筋と脂肪との間の相互作用を仲介する因子の本態の解明に向け、さらに研究を遂行し、老化に伴う骨格筋萎縮の予防法や運動低下による肥満に起因する生活習慣病の予防法への確立へと応用していきたい。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2002 - 2003
【配分額】3,900千円 (直接経費: 3,900千円)