単純なペプチドから汎用的な祖先タンパク質フォールドへの進化
【研究キーワード】
RNAポリメラーゼ / タンパク質進化 / 生命の起源 / フォールディング / タンパク質のフォールディング
【研究成果の概要】
本研究では、「転写」を司るRNAポリメラーゼの起源となったと考えられている小型ベータバレル構造Double-Psi Beta Barrel(以下DPBB)がどのように誕生したかを解明する事を目的としている。約80残基からなるDPBBは、約40残基の配列が2回繰り返したような構造を持つことから、40残基ほどの短いペプチドの遺伝子重複と融合により誕生したと考えられてきた。本研究では、この進化仮説に則り、DPBBの進化を実験的に再現した。はじめに、理論的設計法及び計算科学的手法により完全に同じ配列が二回繰り返した完全対称型DPBBを構築した。さらに、完全対称型DPBBを半分とした約40残基のペプチドが二本会合したホモダイマーの構築にも成功した。この結果は、これまでのDPBBの進化仮説を支持する。
また、DPBB配列に含まれるアミノ酸種を限定することで、何種類のアミノ酸でDPBBを構築できるかを検証した。13種のアミノ酸からなるDPBB変異体を出発材料として段階的にアミノ酸種を減らしたところ、7種類のアミノ酸(Ala, Val, Gly, Asp, Glu, Lys, Arg)だけでDPBB構造を作れることが分かった。また、Gluについては、7アミノ酸種からなるDPBBより削除した場合は構造形成はみられないが、13アミノ酸種からなるDPBBより削除した場合はDPBB構造を維持できることが分かった。つまり、Gluは必ずしもDPBB形成において必須ではないと言える。
古代DPBBの持つ機能についても検証したところ、二本鎖DNAに特異的に相互作用することが分かった。そのため、古代DPBBは転写因子やヒストンタンパク質のような役割を果たしていた可能性がある。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)