植物「嗅覚(揮発性化合物を認識し生体シグナルへと変換する過程)」の解明
【研究キーワード】
植物嗅覚 / 化学感覚 / カルシウムシグナル / プロテアーゼインヒビター / みどりの香り / 嗅覚 / ケミカルプローブ / 匂い応答
【研究成果の概要】
本研究では植物の「嗅覚」の分子機構解明を目指している。2020年度はカルシウムセンサータンパク質GCaMP発現シロイヌナズナを用いた嗅覚モニタリング実験でシロイヌナズナは高濃度の(Z)-3-ヘキセナールには応答するが、実際の植物から放散される濃度の香り化合物には応答しないことが明らかとなった。ただ、植物体内で発生するのと同程度の濃度の香り化合物溶液で処理することで応答が見られ、カルシウム流入を介した応答は植物間コミュニケーションには寄与しないが植物体内の組織間コミュニケーションに寄与している可能性が示唆された。この知見をもとに組織間コミュニケーションに寄与する化学感覚システムの解明研究をスタートさせた。
一方、トウモロコシで(Z)-3-ヘキセニルアセテートガスによってプロテアーゼインヒビター遺伝子の誘導が惹起されることを確認した。そこで、種々の構造類縁体を用いて構造活性相関解析を進め、トウモロコシの応答には3位のZ二重結合が重要であることが明らかとなった。そのうえで研究分担者の渡辺によりケミカルプローブデザインのための合成類縁体が調製され、それらを用いることで(Z3)構造だけでなく、エステル結合も重要な因子であることが明らかになってきた。一般にエステル化合物が細胞内に取り込まれると速やかにエステラーゼにより加水分解される。そのため、(Z)-3-ヘキセニルアセテートによる遺伝子誘導の究極物質が(Z)-3-ヘキセノールであることが示唆された。この結果を元にケミカルプローブのリデザインを進め、同時に遺伝子誘導へのエステラーゼの重要性の確認と(Z)-3-ヘキセノールを母核構造とした類縁体によるアッセイを進めることとした。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
高林 純示 | 京都大学 | 生態学研究センター | 名誉教授 | (Kakenデータベース) |
渡辺 文太 | 東京慈恵会医科大学 | 医学部 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
岡田 憲典 | 東京大学 | 大学院農学生命科学研究科(農学部) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)