マグネシウム・カルシウム同時可視化蛍光分子プローブの創製と細胞イメージング測定
【研究分野】工業分析化学
【研究キーワード】
マグネシウムイオン / カルシウムイオン / 蛍光分子プローブ / BAPTA / βジケトン / β-ジケトン / 細胞イメージング / ニューラルネットワーク
【研究成果の概要】
細胞内シグナル伝達は多数の分子の動態からなり、それらを解析するマルチカラーイメージングは進歩しつつある。そこで、多数のセンサーを細胞に導入するときの欠点(スペクトルの重なり、代謝や分解、局在の違い、毒性)を低減する必要がある。ここでは、一分子のセンサーでの細胞内多数物質同時定量を目指したプローブを提案する。その最初の例として、シグナル伝達物質として重要なCa2+,であり、様々な状況の補因子として機能するMg2+の相関に焦点を当て、マグネシウムとカルシウムを同時に可視化する蛍光プローブ(カルシウムマグネシウムマルチ蛍光プローブ)の開発を行った。カルシウムマグネシウムマルチ蛍光プローブKCM-1は、カルシウムイオンを認識する部位としてBAPTA、マグネシウムイオンを認識する部位としてチャージドβジケトン構造を有し、それがD-A型蛍光団であるクマリンに存在することで、カルシウムとマグネシウムに対して逆の応答を示すように設計された。
KCM-1は、吸収スペクトルにおいて、Ca2+と応答して35nmのブルーシフト、Mg2+と応答して20nmのレッドシフトを示した。励起波長を変えることでそれぞれの応答を異なるスペクトル変化として出力可能であり、また蛍光比をとり解析することで指示薬濃度の影響を受けずに、Ca2+およびMg2+濃度を定量できる。
また、細胞膜を透過可能なアセトキシメチル体を合成し、PC12細胞において、世界で初めての単分子のセンサーによる細胞内Ca2+とMg2+の同時イメージングを実現した。さらに、細胞をFCCPなどで刺激することによる、細胞内カルシウムマグネシウムの動態のイメージングに成功した。(論文投稿中)
本研究に関係し、論文6報、和文の解説文1報が報告された。1報は投稿中である。また、関連した研究がアメリカの一般科学雑誌に紹介された。さらに、設計、合成した蛍光プローブの特性や基礎的な細胞応用例などに関して、国際学会8件、国内学会20件の発表を行った。
当初の計画通りの研究が完了した。新規な蛍光プローブを利用した細胞内シグナルの解明が進んでいくことを期待する。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
山田 幸司 | 慶應義塾大学 | 理工学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
鈴木 祥夫 | 独立行政法人産業技術総合研究所 | バイオニクス研究センター | 研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2002 - 2004
【配分額】13,700千円 (直接経費: 13,700千円)