結晶構造解析に基づくコバロキシム錯体の異性化反応機構の解明
【研究分野】物理化学
【研究キーワード】
結晶相反応 / 光異性化反応 / 不斉反応 / コバロキシム錯体 / X線結晶構造解析
【研究成果の概要】
6種類の軸配位子塩基をそれぞれもつアキラルな3-シアノプロピルコバロキシム錯体をの単結晶を作成し、高輝度キセノンランプで可視光を照射することにより結晶相光異性化反応を試みた。光照射前後のX線結晶構造解析より、3種の結晶ではそれぞれ異性化が進んで生成物が観測され、多の3種では異性化反応は観測されなかった。2-シアノエチル基をもつコバロキシム錯体結晶の異性化のみならず、炭素鎖を1伸ばした3-シアノプロピル基の錯体でも結晶相光異性化反応が進行することがわかった。中でも、フェニルエチルアミンを軸配位子塩基とするコバロキシム錯体の単結晶では、単結晶状態を保ったまま3-シアノプロピル基が1-シアノプロピル基に収率100%で異性化する結晶相反応が観測された。しかも、不斉収率87%でキラルな1-シアノエチルプロピル基が生成した。異性化反応が観測されなかった3種の錯体結晶においては、3-シアノプロピル基のまわりの反応空間が小さいことが原因と考えられる。それに対して、最も反応速度が速く、収率が100%だった3-シアノプロピルフェニルエチルコバロキシム錯体の結晶では、反応空間が大きくしかも反応基が分子間水素結合していた。この水素結合も反応速度を促進する役割をしていると考えられる。また、不斉収率が高かった理由としては、反応空間が非対称な形をしているためであると考えられる。この錯体で中間生成物である2-シアノプロピル基が観測されなかったのは、2-シアノプロピル基は、3-シアノプロピル基の反応空間内に収まりきれず、不安定だったと推測されるので、今後2-シアノプロピル基の収まるような反応空間をもつ錯体結晶を作れば、中間生成物の構造を捕まえることができ、このことが解明されるであろう。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】2,100千円 (直接経費: 2,100千円)