重力波観測によるMACHOブラックホール合体に関する研究
【研究分野】素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理
【研究キーワード】
重力波 / ブラックホール / コンパクト連星 / MACHO / レーザー干渉計 / GPS / 宇宙物理 / データ解析
【研究成果の概要】
本研究は、国立天文台三鷹キャンパスの20mレーザー干渉計プロトタイプを神岡鉱山内に移設することからスタートした。重力波検出器としての感度は移設前後で一桁以上の改善があった。ミラーの変位感度で言えば現在世界一の感度を誇るTAMA300と同等であり、距離1kpcでの連星中性子星合体イベントを信号対雑音比10以上で検出.することができる。さらに観測装置として最も重要な運転時の安定性に関しては、神岡鉱山内の地面振動の小ささと地盤の安定性により格段に改善した。最終的には一週間に一回程度の調整作業で約一ヶ月間の連続観測が可能となった。これは突発的な外乱に対応する自動復帰システムを開発したからである。このシステムの導入により、2001年9月6〜17日の11日間の観測では261.5時間中259.9時間の稼動に成功した。稼動率は99.8%であり、長期運転にも関わらずこれだけの高い稼動率を誇る干渉計型重力波検出器は世界に類をみない。また、スーパーカミオカンデのGPS情報を分岐して、14.4マイクロ秒の精度を持つ時刻システムも構築した。
以上の準備のもとで2001年8,9月にはTAMA300と同時観測を行った。2つの観測装置が同時に動いていた時間は709時間であり、同時観測については世界をリードしている。得られたデータを解析した結果、有為な重力波信号は確認されなかったが、この観測時間、探査範囲(感度)、信頼度の観点から、コンパクト連星合体事象に対して今までにない強い制限(上限値)を与えることになる。
【研究代表者】