テラヘルツ・ヘテロダインセンシングで探る銀河系星間ガスの相変化
【研究分野】天文学
【研究キーワード】
星形成 / サブミリ波 / 星間分子雲 / 銀河系 / 電波望遠鏡 / 中性炭素原子 / テラヘルツ / 超伝導 / 熱伝導
【研究成果の概要】
本研究では、銀河系星間ガスの相変化を観測的に捉えることを念頭におき、以下の2つの研究を展開した。第一は、銀河系におけるプラズマ相を窒素イオンのスペクトル線(1.46THz)でトレースするためのテラヘルツ帯HEBミクサ受信機の開発であり、第二は中性炭素原子スペクトル線を用いた原子ガス相から分子ガス相への変化、即ち、星間分子雲の形成過程の研究である。
HEBミクサ受信機の開発では、国立天文台野辺山観測所の素子製作装置群を用い、Nbを超伝導物質に用いたHEBミクサ素子の開発を行った。電子ビーム描画装置を用いて数100nmサイズのマイクロブリッジ構造をもつ素子をリフトオフ法によって製作するプロセスを確立した。製作した素子を導波管マウントに装着して800GHz帯での動作試験を行ったところ、ミクサとしての動作を確認することができた。素子製作の歩留まりが悪いという問題があるものの、テラヘルツ帯高感度受信器の要となるミクサ素子の製作に目処をつけることができたことは、大きな前進と言える。
一方、富士山頂サブミリ波望遠鏡を用いて、近傍星間分子雲における中性炭素原子のサブミリ波スペクトル線の広域観測を展開した。とくに、近傍の大質量星の輻射にさらされているブライトリム雲について、系統的な観測を行った。IC1396領域およびλOri領域の観測から、中性炭素原子の分布がおもに分子雲の化学進化によってきまっており、ブライトリムに付随する部分は僅かな寄与であることを明らかにした。他の領域の観測と併せ、中性炭素原子サブミリ波スペクトル線が星間分子雲形成を調べるよいトレーサーであることが示された。
【研究代表者】