星形成において磁場が重要な役割を果たすことは多くの理論的考察から予測されているが、その観測は星間吸収などのために、可視光・近赤外線によるアプローチでは限界があった。本研究の目的は、星形成領域においてとりわけ情報が少なかった、生まれたばかりの若い星(原始星やTタウリ型星)のまわりのガスとダストからなる星周構造、とりわけ、ディスクとエンベロープ領域の磁場構造を精密に測定することによって決定し、磁場が若い星の星周構造の形成・進化に及ぼす影響を考察することにあった。
今年度は、英国と共同開発を進めていたサブミリ波検出器(SCUBA)のための偏光器を完成させ、さらに、英国のサブミリ波専用望遠鏡であるジェームズクラークマックスウエル望遠鏡(JCMT)に実際に装置を取り付けて観測を行った。完成したサブミリ波偏光器は、波長350μm-1300μmの長い波長範囲にわたって高い偏光効率(95%以上)を持ち、装置の固有の偏光が非常に小さい(0.2%未満)、優れた偏光器である。その結果、従来の装置では感度が足りず観測が難しかった、微弱な天体(Tタウリ型星)を数例観測し、有意な偏光を検出することができた。その偏光の方向から、これらのTタウリ型星ではディスク面に沿った、いわゆる、トロイダルな磁場が卓越していることがわかった。このデータはTタウリ型星のディスクの磁場構造に関する初めての情報であり、Astrophysical Journal誌に投稿した。
なお、完成した偏光器は現在、JCMTの共同利用観測装置の一つになり、世界中の天文学者が利用可能になっている。