軟体動物の初期発生における外套膜分化と原殻形成の比較形態学・生体鉱物学的研究
【研究分野】層位・古生物学
【研究キーワード】
軟体動物 / 初期発生 / 原殻 / 胚殻 / 比較形態学 / 生体鉱物学 / 進化
【研究成果の概要】
本研究では、軟体動物の発生初期(胚段階または幼生段階)に形成される原殻(胚殻または幼生殻)の形成過程を外套膜の分化過程や胚・幼生の体制変化と関連づけて比較組織学・生体鉱物学的に詳細に検討し、その形態形成学・幼生生態学・系統進化学的意義を考察した。その具体的な成果は、以下の3つにまとめられる。
A.現生腹足類の発生と原殻形成に関する研究
淡水生腹足類の1種モノアラガイ(Lymnaea stagnalis)を素材として、初期発生における原殻形成過程について走査型電子顕微鏡と光学顕微鏡を用いて観察を行った結果、初期の原殻は単純な付加成長によって形成されるのではなく,また石灰化過程も変態後の終殻の殻体形成とは異なる機構によるものであることが示唆された。
B.現生二枚貝類の原殻形成に関する研究
ニオガイ科二枚貝の一種ニオガイ(Zirfaea subconstricta)幼生における原殻形成と軟体部の分化過程の過程を発生を追って調べた結果、1)secreting cellの外面すべてがshell pellicleの分泌に関与していることや、殻体の結晶化が進まない段階で腱細胞の付着基盤として機能していることが確認された。
C.化石頭足類の胚殻の微細構造に関する研究
世界各地の中生界から産した保存のよいアンモノイド類の胚殻の成長様式や殻体微細構造を比較検討した結果、古生代のゴニアタイト類と中生代のアンモノイド類では胚殻の螺管成長様式に顕著な違いがあることがわかった。また、中生代のアンモノイド類の胚殻表面の装飾を特徴づける疣状微小突起は、そのサイズ、形状、胚殻表面での分布様式において種間で大きな違いがあり、卵殻内の石灰質を含む溶液によって無機的に形成された可能性が示唆された。
【研究代表者】