熱水性鉱物表面へ付着することによる原核生物の温度耐性に関する影響の解明
【研究分野】岩石・鉱物・鉱床学
【研究キーワード】
地下生物圏 / 極限環境微生物 / 地熱 / FISH / 表面 / 採水
【研究成果の概要】
地下生物圏の広がりすなわち生物の存在可能な下限を規定する一つの重要な要因として、生物の熱耐性が挙げられる。現在知られている極限環境原核生物の最高生育温度は121℃であるが、天然の硫化物チムニーの詳細研究から、300℃を越える熱水通路の内側に付着している微生物やバイオフィルムが発見されている。すなわち、微生物の産状と熱水性鉱物表面との関係、特に後者が前者に与える影響が生物の熱耐性を解く鍵になるのではないかという「仮説」が成立する。
本研究では極限環境原核生物の熱耐性と生存限界を調べるため、平成19年4月、長野県北安曇郡小谷村にあるNEDO地熱井N18-OT-2において世界に1台しかない高温ボアホール型保圧採水器を用いて地熱貯留層(深度700m以深、温度>120℃。採水深度での温度は111℃)からの原位置地熱水採水を実施し、保圧のまま採取された地熱水に対し、有機・無機地球化学、ガス分析、同位体分析、微生物の分子生物学的検討、CARD-FISH、分離培養などを用いた研究を行った。その結果、得られた地熱水は浅層の地熱流体(温泉水)と深部地熱流体の4:1混合物であることが明らかとなった。本研究の解析によって、初めてCO2に富み蛇紋岩層との熱水反応を経た地熱流体として、その地球化学的特徴が明らかにされた。この流体中に有機炭素は4.55±0.53mg/L存在するものの、濃度が低くその化学的特性は不明である。また、地熱スケールに付着して微生物が観察されたが、量が少なく、培養、CARD-FISHのいずれの手法でも実態を明らかにできなかった。今後、採水量を増加させる必要がある。
一方、最上級の分類項目である門のレベルで新規の好熱性イオウ細菌が獲得された。投稿中のため詳細は述べられないが、これは浅層地熱流体中に棲息していた可能性が高い。
【研究代表者】