力学系としてのマントルの相転移と地球の進化:太古代・原生代境界への応用
【研究分野】固体地球惑星物理学
【研究キーワード】
マントル対流 / プレートテクトニクス / 火成活動 / スーパープルーム / マントル進化 / 数値モデリング / マントルの熱・化学的状態 / 数値シミュレーション / 数値モデル
【研究成果の概要】
本研究における数値シミュレーションでは、プレート・テクトニクスと海嶺における火成活動を他に例を見ない厳密さで再現し、超大陸の分裂・巨大火成岩岩石区(LIPs)の生成など地球の進化に重要な役割を演じてきたスーパープルームを、プレート運動と海嶺火山活動の必然的な結果として再現することに成功した。さらに、スーパープルームが出現するための必要条件を明らかにするとともに、その力学的挙動が地球の進化とともにどのように変遷してきたかを予想した。具体的結果は以下の通りである。
(1)スーパープルームは、沈み込んだ海洋地殻がコア・マントル境界上に蓄積し、豊富な放射性元素による内部加熱のため高温となってできたものである。スーパープルームは組成的・熱的浮力が釣り合って、全体としては浮力を持たず、マントル深部に安定に存続し続ける。
(2)太古代の頃は、現在より豊富な放射性元素による加熱のため、スーパープルームは高温となり、頻繁にその一部がプルームとして浮上し、活発なホットスポットの火山活動を引き起こした。このときのマグマ生成は深さ千キロにまで及ぶこともあった。さらに、この火山活動は、新たなプレート境界を頻繁に生成し、プレート運動を数十億年のスケールで定常に保った。
(3)時代が下り、放射性元素による内部熱源が減衰するにつれ、スーパープルームの温度は下がり、プルーム活動は間欠的になった。このため、プルームによるプレート境界生成もより間欠的になり、プレート運動そのものも間欠的になった。
(2)のマントル深部におけるマグマ生成は太古代におけるコマチアイト生成と、(3)の間欠的なプルーム活動やプレート・テクトニクスの活動は大陸移動のウィルソンサイクルと整合的であり、今回の研究で構築されたマントル進化のモデルは、全体として、地球のマントル進化の特徴を良く捉えていると考えられる。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2004 - 2006
【配分額】3,700千円 (直接経費: 3,700千円)