地震波データの多面的解析によるスロースリップ発生域の水移動モデルの高度化
【研究キーワード】
スロー地震 / 減衰 / 時間変化 / 水 / 地震活動
【研究成果の概要】
Nakajima and Uchida(2018)は,茨城県南西部の沈み込むフィリピン海プレート境界におけるスロースリップ(SSE)発生域周辺(深さ 40-50km)でのP波の減衰構造の時間変化を調べ,SSEによる上盤への排水が1年周期で繰り返されていることを明らかにした.しかし,このサイクルにおけるSSE発生前の水の挙動は観測では明らかになっていない.
そこで本研究では Nakajima and Uchida(2018)の結果を踏まえ,同領域でのSSE発生域周辺におけるスラブ内の減衰構造の2009年から2020年の時間変化,及びスラブ内地震活動の時間変化を MeSO-netの波形データを使用して調べた.その結果,SSEが発生する 0.2~0.4 年前にスラブ内の減衰,及び地震活動度が上昇していることがわかった.これは,スラブ内の水がプレート境界へ排出される過程を反映していると考えられる. スラブ内から上盤に至る水の輸送過程の時間変化を検出した初めての研究である.
また,上盤における S 波の減衰構造を調べP波の減衰構造と比較をしたところ,常に P 波の方が S 波より減衰が2倍ほど大きいことがわかった.これと同様の結果は南カリフォルニアの観測や室内実験で報告されている.しかしながら,水が関与する場合にはP波よりもS波の減衰が大きくなることが期待される.これらの観測事実は室内実験やモデルから予測される結果と一致しない.さらに観測の精度を高めることで減衰のメカニズムのさらなる理解につなかがると期待される.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2025-03-31
【配分額】17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)