遷移金属カルコゲナイド二次元層状多結晶の強磁性とその応用
【研究キーワード】
2次元層状物質 / スピントロ二クス / スピントロニクス / 遷移金属カルコゲナイド / 半導体
【研究成果の概要】
MoS2薄膜の(1)磁化測定と(2)磁気抵抗測定の二つの研究テーマを学部学生と協力して平行して実施した。(1) MoS2薄膜の磁化特性の測定については、研究開始当初からの懸念事項として、基板の反磁性の影響が大きく、適切な磁化測定が阻害される問題があった。これは、基板の厚さがコンマ数ミリであるのに対し、MoS2薄膜は数nm程度と桁違いに薄いためである。まず、これに対する対策を講じた。方法は、通常用いられるシリコン基板(0.3 mm - 0.7 mm)ではなく、一桁薄い0.03mmの極薄基板を特注し、これを用いて薄膜を成膜することによって、磁化を適切に測定することに成功した。その結果、飽和磁化が成膜温度、及び、測定温度に依存して変化することが分かった。測定点を増やし、傾向と系統性を明確にすることで、論文化が可能であると考えられる。(2) MoS2薄膜の磁気抵抗測定については、ノンドープ半導体は4Kにおいては抵抗が非常に大きくなるため、まず低抵抗薄膜の作製方法を模索する必要があった。その方策として、膜厚をやや厚めの7 nm - 8 nmに設定し、表面とボトムからの空乏化の影響を抑止した。さらに、成膜時基板温度を低下させ、また、成膜時のAr分圧を下げることで結晶欠陥を生じさせ、キャリアドーピングを施した。加えて、電極材料を選定した。その理由は、電極材料によってコンタクト抵抗が異なることが知られているからである。仕事関数が真空準位とMoS2の伝導体下端の差に近いものが良いとされていることから、アルミニウムと銀を試行した。アルミニウムでは低温で抵抗の発散がみられたが、銀を用いると抵抗は増大したが、電流を流すことが可能な範囲であった。これにより、4Kで磁気抵抗を再現性よく測定することに成功した。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)