日常認知における領域個有性・一般性の規定要因
【研究分野】実験心理学
【研究キーワード】
領域固有性 / 領域一般性 / 非対称的混同効果 / 生物画像 / 脳機能 / f-MRI / 制約 / 自閉症 / 違和感 / 再認 / 認知の障害 / 脳内機序 / 心の理論 / 非対称性 / 非対称性混同効果 / 画像認知 / 発達 / 視線 / 味覚 / 表情
【研究成果の概要】
「領域固有性・一般性」は、認知心理学における最近注目されている問題の一つである。ある刺激の認知や課題の遂行が、それらに特化したメカニズムに基づいてなされているのか、それとも共通のメカニズムに基づいているのかという問題である。この問題は、視覚認知、認知発達、神経心理学など様々な領域において議論されているが、未解決の問題である。本研究ではこの問題について、次の3つの側面について検討した。(1)画像認知において追加が削除よりも検出されやすいという非対称性混同効果について、領域固有的メカニズムが存在するかどうかの検討。(2)領域固有性・一般性に関する脳内機序について、f-MRIを用いた検討。(3)自閉症に見られる認知の障害が領域固有的であるのかどうかについての検討。
本研究ではこれらの点について検討し、次のような成果を得た。(1)一般に画像認知において追加変化は削除変化より認知されやすく、その背景に違和感の生起があること、(2)非対称的混同効果ならびに眼球運動の関係を調べたところ、違和感を喚起させる追加変化刺激の観察時は、変化した領域へ目は向かうことになり、その領域は正しく特定されるが、一方、削除変化刺激の観察時には、事物がなくなった領域への目の動きを生じさせるが、その領域は正しく特定されないこと、(3)違和感判断を行うときの脳活動をf-MRIを用いて調べたところ、脳の特定領域、特に後部帯状回、島の活性化を引き起こすことが分かった。また、同一の刺激であっても違和感判断を行わずカテゴリー判断を行う場合異なる領域の活動が認められたこと、(4)自閉症に見られる認知の障害は症状としては領域固有的であると言えるが、自閉症の成立の過程を見ると、その認知の障害は生得的なものでなく、知的能力の全般の障害を源として環境との交互作用の結果、形成されたものであること、が明らかになった。
【研究代表者】