数理物理・数理生物のモデルに関する確率解析
【研究分野】数学一般(含確率論・統計数学)
【研究キーワード】
無限次元拡散モデル / 相互作用のある拡散系 / 標本リアプノフ指数 / ランダムウォーク / ブラウン運動 / ランダム環境下のランダムウォーク / 拡散方程式
【研究成果の概要】
研究実施計画に基づいて研究を推進し以下で述べる成果を得た。
1)相互作用のある拡散系は、統計物理や数理生物の多くの興味深いモデルを含み、その確率解析は無限次元拡散過程の研究にも重要な意味をもつ。その観点から従来、定常分布が多様に存在する状況下でのエルゴード的挙動を研究してきたが、今回は定常分布が自明な場合または存在しない場合のエルゴード的挙動の研究に取り組み、有限系からの近似におけるエルゴード的挙動に関する新しい結果を得た。(Cox-Greven-志賀)
また、相互作用のある拡散系と一般化された逆正弦法則の問題との関連も明らかになりつつあり、論文として準備中である。(志賀)
2)無限次元線型マルコフ系の新しいクラスを導入し、対応する標本リアプノフ指数の定義可能性の証明およびカップリング径数に関する漸近挙動を調べ、径数が小さい領域では有限系、無限系ともに同一のオーダーをもつことを証明した。(古尾谷-志賀) このアイディアはランダム環境中のランダムウォークの生存確率の漸近解析に適用可能であり、その結果は論文として掲載予定である。(志賀)
3)ランダムウォークおよびブラウン運動について種々の観点から研究を進め、2次元ランダムウォークのポテンシャル核の精密な漸近解析(深井-内山)、さらに時空的観点からのウィーナーテストの問題を解決した。(深井-内山) また、ブラウン運動が導く道空間上のある種の保測変換と数々のブラウン汎関数の同分布性との関連を解明した。(高岡)
4)線型拡散方程式に対する混合問題の非負解の一意性が成り立つための領域の形に関する必要十分条件を与えた。(村田)また、常微分方程式系とそれに拡散項を付けた非線形拡散方程式を解の爆発問題の観点から研究し、常微分方程式系のあらゆる解は原点に収束するのに,その常微分方程式系に拡散を付けた方程式の解は爆発するという興味深い例を見つけた。(二宮)
【研究代表者】