島嶼部東南アジアの開発過程と周縁世界:マイノリティ・境域・ジェンダー
【研究分野】文化人類学(含民族学・民俗学)
【研究キーワード】
開発 / 周縁世界 / 島嶼部東南アジア / マイノリティ / 境域 / ジェンダー / アイデンティティ / 社会変容 / 開発と周縁世界 / 東南アジア島嶼部 / 観光開発 / 民族アイデンティティ / 家族像
【研究成果の概要】
1960年代以降、開発主義的政策のもとで著しい変容を遂げた東南アジアの多くの国では、1970年代以降、周縁世界も開発政策の対象とされるようになった。しかしながら、政治的な影響力を持たない周縁世界は、開発によって急激な変容を遂げたにも関わらず、これまであまり研究の対象になることがなかった。本研究は、開発主義を指向する権威主義的政権が比較的長く続いた島嶼部東南アジアの三ヶ国、すなわちインドネシア、マレーシア、フィリピンを対象とし、理念、政策、実践としての開発と、社会(マイノリティ)、空間(境域)、性差(ジェンダー)の三位相から捉えられた周縁世界との関わりを、40年ほどの時間幅のなかで考察することを目的とした。
研究活動は、研究組織メンバーによるフィールドワークと、日本国内における資料収集ならびに年一回の合同合宿研究会であった。三年間の成果は、個々の公表論文以外に、大部の報告書としてまとめられた。以下、報告書の概要である。〔島嶼部東南アジアの開発過程の概観〕の担当者は、各国の開発政策におけるマイノリティ、境域、女性の位置づけの変遷を歴史的に跡づけ、開発と周縁世界に関する資料集をまとめた。〔マイノリティ〕の担当者は、スマトラ島における移動焼畑民・プタランガンの土地利用と土地権、マレー半島における先住民と学校教育、ルソン島における山岳少数民族の植林運動をテーマとし、マイノリティ社会における開発の影響について報告した。〔境域〕の担当者は、リアウ州における地域アイデンティティの変容、ダバオ市におけるキリスト教援助団体の社会的影響に着目し、開発の拡大にともなう境域社会の変容について報告した。〔ジェンダー〕の担当者は、インドネシアの公的言説における家族像と女性観、フィリピンからの再生産労働者としての女性の海外送り出しに焦点をおき、開発政策における女性の位相について報告した。
【研究代表者】