生活時間を考慮した多次元貧困指標の構築に関する研究
【研究分野】財政・公共経済
【研究キーワード】
多次元貧困 / 生活時間 / 主観的貧困 / 住居 / 健康 / 時間貧困 / 格差 / 貧困
【研究成果の概要】
本年度は、多次元の貧困と教育歴との関係や貧困削減にむけた公共政策(税・社会保障・最低賃金)の諸効果について、昨年度に引き続き実証分析を進めている。また、一昨年度に公刊されたUrakawa, Wang and Alam(2020)に続き、就労世代の生活時間の貧困と健康関連の諸活動(睡眠、飲酒、喫煙、運動など)との関連について、個票データを用いた考察を進めている。
安藤・浦川 (2021)では、多次元貧困の考え方に基づき、「腐朽・破損」、「洗面所なし」、「浴室なし」、「最低居住面積水準未満」などの居住環境の様々な側面についての剥奪指標を構築し、世帯レベルでの所得水準と居住の剥奪・貧困の関係を検証した。分析の結果、多くの剥奪指標において、所得水準が低下すると剥奪割合が増加する「負の所得勾配」があり、その勾配は所得が低下するほど急になる傾向が確認された。また、この所得勾配の形状は剥奪指標や世帯類型によって異なり、単身高齢世帯やひとり親世帯においてより明瞭な負の勾配が観察された。複数の居住指標が剥奪状態となっている貧困世帯の割合(貧困率)をみると、とりわけ単身男性の高齢世帯において、低所得層の貧困率が急激に高くなっていた。
Wang, Urakawa and Anegawa (2022)では、高等教育への進学・卒業が貧困削減に与える効果の男女差について傾向スコアマッチングの手法をもとに検証を行った。推定結果として、男性は高等教育が貧困削減に与える効果が所得貧困、多次元貧困(生活時間を考慮したIMD貧困)ともに確認されるが、女性は本人所得やIMD貧困の貧困リスク削減の効果が非有意である点を示した。
現在、最低賃金の引上げが労働者の賃金水準に与えた影響について、論文改訂中である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
石井 加代子 | 慶應義塾大学 | 経済学部(三田) | 特任准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2017-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)