邦訳作品のアジアにおけるリンガフランカ的役割への一考察 ― 邦訳グリム童話を例に
【研究キーワード】
メルヒェン / 翻訳 / グローバル / アジア / グリム童話 / 受容 / 翻訳文学
【研究成果の概要】
『グリム童話集』は、世界各国で翻訳刊行されており、原著第一巻の初版刊行200周年を記念する学会が2012年にドイツ・カッセル大学で開催された。その際、各地での翻訳受容も数多く紹介された。本研究では、日本におけるグリム童話の受容を研究するだけでなく、日本の翻訳が、近隣のアジアの国の翻訳受容に与えた影響についても考察対象を広げる。2017年の厳基珠論文が示したように、韓国での初期のグリム童話翻訳に、日本語の翻訳が底本として用いられた。こうした例は他にもあることが想定される。
世界的にみても、初期のグリム童話翻訳には、ドイツ語の原著ではなく、英語版が用いられることが少なくない。そして韓国や台湾においては、歴史的な事情から、日本語に通じた翻訳者が多かった時代には、英語圏よりも文化的に近い日本語訳からの翻訳のほうが都合も良く、現在明らかになっている以上に、邦訳が底本として使われた可能性がある。それはグリム童話にとどまらない可能性もあるだろう。
日本では明治期以降、西欧の書物が多数翻訳出版されてきた。それらが、アジアで翻訳底本として使われた可能性の調査を支える礎となるデータを収集することも本研究の目的のひとつである。現在は対象はグリム童話の邦訳に絞っているが、明治・大正期に日本語に翻訳され出版されたグリム童話集は、多くがオンラインで公開されている。そのデータを整理し、日本(語)でオンライン公開されている資料に、各国語からのアクセスが可能な状態にし、今後の研究への一助としたい。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
石井 道子 | 早稲田大学 | 理工学術院 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)