東アジア諸国におけるダーウィン進化論の受容と変容の過程を解明する
【研究分野】科学技術史(含科学社会学・科学技術基礎論)
【研究キーワード】
進化生物学 / 理論受容 / 東アジア / 知識進化論 / ミーム学 / 文化変容 / 科学史 / 社会生物学 / 国際比較 / 人文・社会科学と自然科学 / ダーウィン進化論
【研究成果の概要】
おもに韓国を中心として、中国・台湾の事例を参考としつつ、ダーウィン進化論の受容と変容の過程を、研究者への聞き取り調査と文献調査により明らかにした。韓国では動物行動学と社会生物学の両者がほとんど同時に導入されているのが特徴である。1985年が動物行動学の最初の翻訳で、1991年にティンバーゲン、1992年にウィルソン、ドーキンス、1994年にローレンツ、フルディ、ドーキンス、モリス、さらに1995年は進化心理学(バス)も続いている。さらに、反社会生物学も1993年にNot in 0ur Genes、1995年には反社会生物学者を含めたシンポジウムの記録が出されている。もうひとつの特徴は、いくつかのバイパスが存在することである。初期(1990年まで)の文献はおもにフランス語文献からの翻訳で(「フレンチ・コネクション」)、これは、韓国への進化生物学の導入紹介に大きな貢献をしたリー・ビュンフン(全北大学教授・韓国生物多様性研究所長)が、フランスに留学していたことによるのだろう。さらに後期(1990年以降)になっても、英語圏からはクレブス&デイヴィスやメイナード・スミスは翻訳されていない。ウィルソンとドーキンスが中心である。
この事情を日本と比較すると、日本では1980年代に正統ダーウィニズム(=進化総合説と、その改良版である社会生物学を導入しなければならなかったという「アクロバット」をしいられたのに対し、韓国では日本からさらに10年遅れて、1980年代後半から90年代前半にかけて、正統進化生物学と動物行動学と社会生物学を、三点セットにして導入した。日本が二重のアクロバットなら、韓国は三重のアクロバットを強いられている。また、韓国ではキリスト教の勢力が強く、その影響も無視できない。創造論はそれなりに盛んで、分子生物学者や生理学者の中には創造論に荷担する学者もいるという。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)