包括利益の総合分析-理論研究と実証研究-
【研究分野】会計学
【研究キーワード】
その他の包括利益 / SEC基準 / 市場非効率性 / 資産負債観 / 国際会計基準 / 税効果会計 / 資本コスト / accruals / 資産負債中心観 / 市場効率性 / accounting accruals / アナリスト利益予測 / キャッシュフロー / 包括利益 / 確定決算主義 / シグナル均衡 / 企業資本コスト / 私的情報 / 経営者の意識調査 / accrual / ROE / Jonesモデル / EBOモデル / 自己資本コスト / シグナリング均衡 / 実験経済学
【研究成果の概要】
包括利益の理論研究に関しては、辻山が会計基準の観点から、前田が業績管理会計の観点から、さらに共同研究者松本が税務の観点から、それぞれ理論分析の論稿を展開した。本共同研究における見解は、成果報告書の概論にまとめてある通りである。
包括利益の実証研究に関しては、まず計2回の2年間に亘りアンケートを行い、その他の包括利益の有用性についての我が国企業経営者の意識調査を進めた。その成果は、昨年度の第1回アンケートについて、会計学会で報告すると共に、武蔵大学論集で刊行したが、我が国の企業経営者は純利益がもっとも大事な外部報告のための指標であるが、包括利益も補助的に有用であると考えていることがわかった。第1回アンケートの全貌、および第2回アンケートのうち利用者の観点からの結果については、証券アナリストジャーナルの5月号において公刊される(初校済み)。
さらに、実証研究に関して、税制と利益性そして企業の資本コストの関係について、久保田がInternational Institute of Public Finance Congressで、利益と市場非効率性について須田がAsia Academic Finance Associationで、竹原がSouthwestern Finance Associationで、またaccounting accrualsの価値関連性については久保田がCarnegie Mellon大学Accounting Seminar、などにおいてそれぞれ研究成果を国際学会発表した。これらの実証研究から、日本の資本市場では、利益操作された会計利益に反応するが、翌年度の利益情報が開示されるにつれて、これが矯正されていく、すなわち短期的な市場非効率性が見られること、さらにこれらの調整を投資家が正しく分析するためには、景気(ビジネスサイクル)の確率過程、そしてその利益の確率過程との関係、さらにそれによる株価収益率との関連を有機的に分析することが大事であることが明らかにされ。これらは、資産負債観による、現在の税効果会計の方法を正当化するものである。
【研究代表者】