最新の地形学に基づく歴史的構造物の立地分析:地形と歴史の科学的な関連づけの試行
【研究キーワード】
地形 / 歴史 / 地理情報システム / 画像資料 / 古墳 / 城郭
【研究成果の概要】
歴史的構造物の分布と地形などの環境の要素との関係を検討するためのモデルを日本と中国陝西省に適用した。対象は日本の約1400の古墳と約200の城郭、および中国の200の遺跡・史跡である。モデルはバッファー解析などのGIS(地理情報システム)の機能を用いたデータの集計や統合に一般的な統計解析を組み合わせたものと、機械学習を活用したものの二種類を適用した。前者は状況の把握に基づく経験的な検討に有用であり、後者は状況の把握を予測に発展させるために有用と判断された。また、地形の影響を検討する際には、歴史構造物の構築時に生じた地形の特徴を含めてモデルの予測可能性を高める方法と、構造物の構築以前の状況を反映すると考えられる地形のデータを用いて立地の背景にある地形環境を推定する二つの異なるアプローチを適用した。その結果、両者の結果には共通性もあるが、古墳のように構築による地形変化が直接的な対象では、結果が大きく変わることが示された。
また、都市や集落における過去数十年間の居住域の立地や土地利用の変化を、環境の要素と関連づけて検討し、歴史構造物の場合と比較した。また、歴史的建造物の立地が自然災害の発生しやすさとも関係する可能性を考慮し、地形と自然災害との関連についても検討を行った。
今年度は中国や台湾の歴史的建造物と立地条件に関するフィールドワークを予定していたが、コロナ禍のため昨年度に引き続き不可能となった。そこで、ウェブなどで収集可能な古い景観写真に関する画像資料の整理と分析を進めた。この際には、対象の位置情報の確定、画像の撮影位置の同定、および写真撮影者の視点に関する検討を行った。また、得られた試料をデータベース「絵葉書からみるアジア:京都大学貴重資料デジタルアーカイブ」に登録した。さらに、建造物の立地に影響を与えた可能性がある過去の社会情勢についても検討した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
貴志 俊彦 | 京都大学 | 東南アジア地域研究研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2018-06-29 - 2023-03-31
【配分額】6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)