意識と感情をもつ認知システムについての哲学的研究
【研究分野】哲学・倫理学
【研究キーワード】
感情機能 / クオリア / ニューラルネットワーク / 遺伝アルゴリズム / 機能主義 / 共感 / スーパーヴィーニエンス / 現象的意識 / コネクショニズム / 計算論的に解決不可能 / 心的因果 / 哲学的ゾンビ
【研究成果の概要】
1.本研究における成果の第一は、(1)ニューラル・ネットワーク群による感情機能の実現であり、これは、本研究の分担者の一人、月本洋の研究室で作成された。研究チームとしてはそれ以外に主に二つの成果を残している。その一つは、(2)平成16年10月に開催された第37回日本科学哲学会におけるワークショップ「思考の言語(Language of Thought)とコネクショニズム」への全面的関与であり、その司会とコーディネータは柴田正良が務め、服部裕幸、美濃正が発表者として参加した。もう一つの成果は、(3)平成18年8月にアメリカのアトランタで開催された感情に関する国際学会International Society for Research on Emotions(ISRE)おいて、柴田と長滝祥司が上記の感情ニューラル・ネットワークの報告と発表を行ったことである。
2.以上の具体的な成果を理論的な面から述べるなら、(a)意識とクオリアに関しては、機能主義的な存在論に回収できるのか否かに関して議論は深められたとはいえ、最終的な結論には至っていない。消去主義的な立場から性質二元論的な立場まで、本研究においてもまだ混迷を脱し切れていない、というのが実情である。また、(b)感情の本質とその機能に関しても、人工的な実現という作業を通して、かえってその社会的次元の存在様態に関する分析の必要性が認識された。その意味で言えば、<感情の機能>とは、未だ漠然とした曖昧な理論的背景の上に漂う未知の研究対象なのである。
3.われわれの研究成果を一言でいえば、「意識と感情を持つ認知システム」の設計原理・存在性は機能主義的であるが、しかし認知の部分的実現によってはその全容は解明されない、ということの痛切な認識であった。われわれの次なる課題が、「認知ロボティクスの哲学」であるゆえんである。
【研究代表者】