視覚的充填現象の機能的側面に関する心理物理学的検討
【研究キーワード】
視覚的充填 / 視覚的補完 / 視覚マスキング / 錯視 / 周辺視 / 視覚的意識 / 視覚 / マスキング / 知覚的充填 / 周辺視野 / 眼球運動 / 心理物理学
【研究成果の概要】
特定のテクスチャパタンを持つ領域を視野中心部へ呈示する直前に,その領域と同じ形の高コントラスト線分を短時間呈示して領域の輪郭をマスクすると,主観的にはテクスチャパタンが領域の輪郭を超え,視野全体に広がって見える。本研究では,筆者の発見したこの「マスク誘導充填(Mask-induced filling out)」現象(https://www.youtube.com/watch?v=gR-tftljQx4)を題材に,人間の視覚における補完のメカニズムを検討している。
視覚的充填現象について,これまでに提案されている説明モデルは大きく2種類に分類することができる。そのひとつは,視覚情報の欠損部位には,その周辺の色やテクスチャの神経表象のコピーが充填されると考えるもので,こちらは同型(isomorphic)理論と呼ばれる。もう一方は,情報の欠損部位全体が特定の色やテクスチャの「ラベル」によって一括して置き換えられると考えるものであり,こちらはシンボル理論ないしは認知理論と呼ばれる。言い換えれば,欠損部位に充填された見え(テクスチャ要素等)にレティノトピックに対応した神経表象が形成されることを仮定するのが前者であり,それを仮定しないのが後者であるといえる。本年度はこの理論のうちいずれかが妥当かを検討する心理物理実験を行った。これまでに得られたサンプルサイズは事前に設計した実験参加者数にはまだ満たないものの,予備実験の結果からはシンボル理論を支持する結果が得られている。
加えて,アウトリーチ活動の一環として,日本心理学会第85回大会にて,本研究の題材である特定の視覚パターンとその動き(動的な画像提示)を組み合わせた錯視映像をCavalryというソフトウェアで作成するためのオンラインワークショップを開催した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)